私 の 作 詞 活 動

 

 

 

 私は子供の頃から那賀川の川原で父母が仕事している間、じっと父母の仕事の終わるのを待ちながら川原に寝そべり流れる雲を見ながら色々と想像の世界に入って空想する事が大好きでした、自分が想像上何にでも成る事が出来て、ある時は誰にも負けない強い子供に成り、又ある時は誰にでも好かれる格好良い子供に成っていたり、自分が持ち合わせていない力や容姿を想像して夢の中で遊ぶ少し危ない子供で有ったように記憶している。
 時がたち会社をリタイヤしてからは余裕の出来た時間を利用して散文や詩を書く事が好きに成ってきた、これはまさに子供の頃の思い出の延長上で自分をその時々に合わせて男に成ったり、又ある時はこどもを持つ母親に成ったり、年頃の娘に成ってみたりと空想と想像にひたり、その立場に成りきって発展させる事が出来る作詞が大好きである、私は本当の意味での作詞家のような専門教育を受けた事もなく、ただ心で思った気持ちを素直に詩に書く事が楽しく成ってきている今日この頃である。
 
それも自己満足そのもので「下手な横好き」は自分でも理解納得している、友人の奥さんやピアノの先生が曲を付けてくれて楽しんでいたが作詞の数も次第に多くなってきたので、このホームページに掲載した。

(注意事項)
タイトルの下にボタンを設定している、一番左は曲のカラオケ、次のボタンは編曲したものか、友人が歌った曲が入っている。
現在の所巧く設定できていないかも知れません、あしからず。

 

 

 

いもうと 伊島の娘 忘れじの祖谷 愛しき人 ユキと言う女
むすめ 影法師 お姉さん どかちん 幼なじみ
あんた  息子よ  見返り峠  阿波踊りの夜   お出でよ徳島
お前さがして  北の駅  別れのあと  ちいママ   祖谷の恋歌
よく聴けよ         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

001   いもうと             作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世 
 

 

            

 

 

 

 人の世とは何と悲しく儚いもので有ろうか、幼い頃ホッペタがリンゴのように赤い色をして泣き虫で何時も私の跡に付いて来ていた、二つ違いの妹、やがて結婚し二人の子供に恵まれて幸せな生活を送っていたが、不幸は前触れもなく突然に襲ってきた、肺ガンが発見され闘病生活が始まり、病院を訪ねると病室で笑って迎えてはくれたが、その頭には既に闘病のせいで髪の毛は無く痩せ細っていた。
 覚悟をしていたのか後に残る子供の心配をしている姿が痛ましく、突然に妹が私に顔を近づけて「兄ちゃん、父ちゃんよりちょっとだけ長生き出来て良かった、親に先立つ不孝をせずにすんだから」と言った言葉に、父が体調を崩した時には、既に妹は肺ガンの宣告を受けていて父親より早くは死ねないと闘病に頑張っていた事を知る、私は病室に活けられた花瓶の花をただじっと見つめながら涙を堪えるのが精一杯でした、今は亡きその妹を追想して詩を書きました。

 

 

 

 

 

  1, 赤いほっぺにお下げ髪                  2,  野良から帰る母の背で

    細い野道を追ってくる                     遊び疲れて眠ってる

    兄ちゃん待ってと泣いていた                  土で汚れたその顔に

    可愛かったな妹よ                       涙一筋光ってた

 

 

  3, 二十歳半ば嫁に行き                   4,  幾年過ぎて母は逝き

    兄ちゃん今は幸せと                      あとを追うのか妹よ

    話せば子供の事ばかり                     野菊の香る病室で

    逢えば白い歯見せていた                    坊主頭で笑ってた

 

 

  5, もつと生きろと願えども                 6,  二つ並んだ親子星

    やせ衰えた白い手に                      元気でいるかと叫べども

    あとは頼むとペンを取る                    キラリキラリと光るだけ

    今は帰らぬ流れ星                       心凍てつく冬の夜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

002    伊島の娘                   作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世
 

 

           

 

 

 

 四国の最東端、「伊島」の絶壁に今日も朝から太平洋の荒波寄せ来る沖合をじっと眺める娘が一人ただずんでいた、娘の許婚が台風が接近している暴風の荒波の中へ、漁から帰って来ない友達を助けに行くと出航して行ったが、幾ら待っても彼も友達も帰っては来なかった、既に一年の月日が経ってしまった。
 
今日も又日の出と共に絶壁に立ち彼の無事と帰りを待ち続けている娘、その心情は察するに余りある、沖へ飛び行くカモメにも無事を祈り「帰ってきて」と頼みを託すその情景を詩に書きました。

 

 

  1,  貴方は三十で私は二十歳

     阿波の伊島で育った二人

     何時かは所帯を持ちたいと

     貴方の言葉を待っていた

 

 

  2,  波頭逆まく嵐の夜に

     人を救うと出かけて行った    

     あれから一年帰ってこない

     貴方の姿が瞼に浮かぶ

 

  

  3,  何時かはきっと帰って来ると

     岬に立って水平線を

     眺め続けて心に祈る 

     蒲生田岬も涙でかすむ

 

 

  4,  貴方の親は元気でいます

     便りの一つも送って欲しい

     早く元気で帰って来てと

     沖へ飛び行くカモメに叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

003

 

  忘れじの祖谷                   作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 

 

           

 

 

 

 「忘却とは忘れ去ることなり、忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」この言葉は名作「君の名は」の前振りの一節で有りますが、交際している男女に取って近づき過ぎると疎ましくなり、彼女は交際していた彼と些細なの口論の末に、彼と別れ故郷を捨て都会へ出て行き一人で生活して来た。
 5年の歳月が経過した今でも、都会での一人暮らしは侘びしく別れた彼との懐かしい故郷の事が時が経つにつれて想い出され、故郷祖谷で彼と過ごした楽しかった事ばかりが想い浮かんできます、今頃彼はどうしているのだろうか、彼女は出来たのだろうか、未だ独り身でがんばつて居るのだろうか、色々と想像しているうちにた彼の事が頭から離れずに、たまらら無く成り、バスに乗り故郷祖谷へ帰る事にしました、バスの中で彼との想い出を追想しながら胸躍らせる彼女の心情を詩に書いてみました。

 

 

 

 

 

  1,   覚えていますか私のことを

     橋の袂で別れた二人

     思い出すのは貴方の笑顔

     霧にかすんだカズラ橋

 

 

  2,  都で過ごした5年を捨てて

     心弾ます祖谷への旅路

     貴方に逢いに帰ります

     胸に抱かれて眠りたい

 

 

  3,  忘れたはずの貴方の胸で

     生まれ変われる私なの

     祖谷のいで湯で聴く歌は

     愛しい貴方のこひき歌

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

004

 

   愛しき人                   作詞 日下 晴久     作曲 日下 晴久

 

 

 

 

 

  

 

 男とは彼女が嫁に来てくれるまではあの手この手で気を引きながら、嫁に来てしまうと最初の気持ちを忘れ色々と世話をしてくれる事が当たり前の様に思い、感謝の気持ちを忘れがちに成ってしまう事が多い様に思います、親の反対を押し切って嫁に来てくれた妻の気持ちを何時までも大切に忘れないようにし、男の見栄などは捨てて今日からは、お前と二人仲良く暮らしていきたい、共年寄りに成り幸せな一生で有ったと思えるような夫婦で有りたいと、その気持ちを詩に書きました。

  

 

 

 

 

  1、  苦労かけたななぁお前

     なんの取り得も無いままの

     歳の違ったこの俺に

     貴方が好きよと手を握り

     ふた親捨ててついて来た

 

  2、  田舎の街の片隅で

     貧乏暮らしも苦にせずに

     朝も早よから夜なべまで

     愚痴の一つもこぼさずに

     黙って支えてくれたやつ

 

 

  3、  男の面子と意地を張り

     優しい言葉も掛けないで

     お前の気遣い健気さに

     心の中で手を合わす

     何時かは着せたい嫁衣装

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

005

 

  

  ユキと言う女                  作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 
           
 

 

 
 徳島の8月はヨシコノのリズムが町々に響き亘り阿波踊り一色に成り、新町川の水面には提灯の灯りが妖しく揺らぎ、浴衣姿の若者達で街が覆われる季節であります、和服姿がよく似合う年の頃なら30歳前後のすごく綺麗な人に新町橋の上ですれ違い、思わず跡に付いて行ってしまった。
 その女の人は秋田町の路地のスナックへ入って行きました、お酒が飲めない私で有ったが思わずドアを開けて入ると、独特の薄暗い照明の下美人のママが出てきた、細面の美人で長い黒髪と余り出しゃばらない私の理想とするママであった、お酒を飲まずにママと人生を語り明かした、既に街からはヨシコノのリズムは聞こえず秋田町の夜はさらに更けて深く私を魅了して行った。

 

 

 

 

  1,  貴女とと初めて逢ったのは

     ヨシコノざわめく秋田町

     路地を入ったスナックの

     暗いほかげに俯いた

     白いうなじが気をそそる

 

  

  2,  肩まで下がった黒髪を

     手でかき揚げて微笑んだ

     着物姿の美人ママ

     ユキと言う名を教えられ

     チークダンスで夜が更ける

 

 

  3,  径を覚えた阿呆鳥

     飲めぬお酒を無理に飲み

     身の上話につまされて

     暗い過去など忘れろと

     ユキと名を呼び抱き寄せた

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

006

 

  むすめ                     作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 

 

 

 

 

  人生とは「出合いと別れ」の連続で有ります、縁有って結婚生活を営んで居た家庭にもやがて別れが訪れるかも知れません、時が経ち離婚が決定し女が乳飲み子を残して家を出て行く最後の日、未だ立って歩く事が出来ない一歳の幼娘に乳房を含ませ今宵限りの添い寝と涙を堪えて抱きしめた。
 その朝、今日が最後と出て行く真際、最後の別れに娘の顔をのぞき込むと寝ている娘から小さい声で「かぁーちゃん」と言う呟きを聴いてどっと涙があふれ出し大きな嗚咽を止める事が出来なかった、あれから19年の歳月が経った娘の成人式の日、二度と足を踏み入れはしまいと心に誓った、その土地に来て娘の成長を陰から眺め乍ら涙する、その母親の心情を詩に書きました。

 

 

 

 

  1,   乳房含ませ頬すり寄せて

     立って歩けぬ乳飲み子を

     これが最後と添い寝する

     幼子残し故郷捨てた

     母を呼ぶ声忘れはしない

 

 

  2,  遠く離れて暮らしていても

     つのる思いに枕を濡らす

     元気で賢く育ってくれと

     我が身を分けたお前の事を

     忘れたことは一時もない

 

 

  3,  詫びて戻れぬ母なれど

     お前を見たくて帰った街で

     可愛い娘に育つた姿

     陰から眺めて心が騒ぐ

     何時かは母を許しておくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

007

 

  影法師                      作詞 日下 晴久     作曲 日下 晴久

 

 
                      
 

 

  夫婦で有っても長い人生に於いては楽しい蜜月の日はそう長くは続か無いと思います、どちらかと言えばお互いが余り意識しない空気の様な惰性の関係が続くものです、時には険悪な関係の日も多いのではないでしょうか、久しぶりに夫婦揃っての外食で妻の指に目をやった時、指先の痛々しいひび割れと手の節膨れに妻が何の愚痴も言わずにじっと耐えて、まるで私の影法師の様に頑張ってついて来てくれた苦労を思い胸が熱くなりました。
 自分はその妻の苦労を知ろうともせずに適当に毎日を楽しんで暮らし、全てを妻任せに生きて来たような気がして成りません、この年に成って初めて妻の苦労を知り愛おしいと思いました、遅まきながらも妻に感謝の気持ちを捧げ、これからの人生私が妻の影法師と成って妻に少しでも楽をさせてやりたいと考え作詞しました。

 

 

 

 

 

  1,  許してくれよなぁお前

     どんな苦労も厭わずに

     黙って俺に付いて来た

     手の節ぶくれやひび割れに

     お前の痛みが身に浸みる

 

 

  2,  苦労掛けたななぁお前

     愚痴の一つも漏らさずに

     風の吹く日も雪の日も

     何時も離れず影法師

     支え続けてくれたやつ

 

 

  3,  待っててくれよなぁお前

     やつれたお前のその陰で

     遊び呆けた俺がいた

     心入れ替え明日から

     二人で手を取り歩みたい

 

 

  4,  二人で入る露天風呂

     そつとお前の肩を揉む

     顔赤らめて嬉しいと

     つぶやく頬に露の跡

     俺はお前の影法師

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

008

 

   お姉さん                    作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 
 
 
 

 

 目を瞑れば鮮やかに浮かんで来るのは、幼い頃故郷の蓮花畑で三つ違いの隣の姉さんが、花を繋いで首飾りを作って「あなたの嫁さんに成ってあげる」と言って首に掛けてくれたこと、姉さんの顔が夕日に映えてすごく綺麗で嬉しくて二人で「指切りげんまん」をした遠い日、先日そんな隣の姉さんの訃報聞かされました。
 二度と逢う事が出来なく成ってしまった事が残念で心が痛みました、故郷には年老いた母が一人で一生懸命に生きています、どうか天国から一人で健気に生きている母親を見守って下さいと祈らずには居られません、幼い頃二人で遊んだ隣の姉さんを想い詩に書いてみました。

  

 

 
 

 

  1,  浮き雲流れる故郷の

     幼き昔を偲ぶれば

     蓮花畑で花を摘み

     花束作ってくれた人

     隣の姉さん思い出す

 

 

  2,  高校生に成った頃

     淡い憧れ抱きつつ

     気持ちを話せど伝わらず

     隣の姉さんニッコリと

     黙って笑って聴いていた

 

 

  3,  高値に一輪咲く花と

     胸に閉まって諦めた

     逢えば笑って頑張れと

     何時も応援してくれた

     綺麗で優しいお姉さん

 

 

  4,  都会の彼に嫁いだと

     風の噂で聴いていた

     夫婦仲良く暮らしてる

     何時かは逢えると楽しみに

     遠く離れて祈ってた

 

 

  5,  姉さん急に旅立った

     心ふるわす悲しさよ

     黄泉の幸せ願いつつ

     生まれ育った故郷の

     母を見守る星となれ

 

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

009

 

  どかちん                   作詞 日下 晴久     作曲 川田  潤  
 

 

 

 
 

 

 若かった頃親に反抗し世間にすねて、両親から貰った綺麗な体を汚し粋がって街を闊歩していた、そんな私に居酒屋で働く女が黙って一生懸命に優しく尽くしてくれました、「私に尽くしても幸せに成れないよ」と幾ら言っても彼女は変わることなく尽くし続けてくれました、これ以上この街で生活すれば彼女を不幸にしてしまうと思い、ある日私は彼女の幸せを願って黙って街を出ました。
 学の無い私は亘りの土方に成って働きながら全国を西から東と現場を亘り生活を続けました、飯場の冷たく凍えた万年布団にくるまった時、思い出されるのは故郷の美しい景色と長い黒髪の優しかった彼女の姿でした、それで私は彼女の幸せを願ってこれから先の人生土方で生きていこうと決心しました、瞼に浮かぶ若き日の彼女を追想し乍ら書いてみました。

 昭和三十年代後半から昭和五十年代に掛けての右肩上がりの好景気に沸く国土日本の開発の影に隠れて、3Kと言われながらも道路工事に、橋梁工事に、トンネル工事にと必死に成って働いてきた「土方殺すに刃物はいらぬ雨の三日も降ればよい」と嘲笑されながら自分の体を粉にして働き国土開発の一端を支えた「土方と呼ばれる名も無き人達」、建設機械もそれほど発達していなかった時代、事故により逝ってしまった人達の多かった事も事実であり、心優しき彼らとともに同世代に生きれたことを私は誇りに思いこの「どかちん」と言う愛称と一編の詩を捧げ心からの感謝の気持ちを表したい。

 

 
 

 

  1,  俺が居たのじゃお前の不幸

     黙って一人で旅に出た

     飯場暮らしの侘びしさは

     土方で生きる俺の道

     今日も汗かき穴を掘る

 

 

  2,  里には桜も咲いたろか

     ふるさと捨てて早三歳

     雷鳴とどろく山あいに

     霧が沸き立つ風が吹く

     土方泣かせの雨が降る

 

 

  3,  飯場暮らしも板に付き

     万年布団の独り寝は

     心凍てつく人肌恋し

     忘れたはずのお前の顔が

     瞼に浮かんで目か冴える

 

 

  4,  西から東と現場を流れ

     長い黒髪見るたびに

     別れたお前を思い出す

     過去の事だと諦めて

     土にまみれて生きて行く

 

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

010

 

  幼ななじみ                  作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世  
 

 

 

 
 

 

 私は人口数百人の小さな山峡の村で育ちました、大きな川の対岸へ架かった吊り橋を渡った所に幼友達の女の子が居ました、小学校へ通う朝は毎日吊り橋を渡って駆けてくる、彼女を待ち学校へ通うのが楽しみの一つでした、時が経ち同じ高校へ入学する事が出来お互いが意識し始め交際が始まって暫く経ったある日、彼女は交通事故で突然に逝ってしまいました、密かに嫁さんにしたいと思っていた彼女が突然に居なくなった寂しさとむなしさに心をかきむしられる想いでした。
 それから十数年経った頃私は仕事で一時故郷に帰りました、彼女を何時も待っていたあの吊り橋の袂へやって来ました、今は上流に大きな橋が架かり使われなく成っている、誰も通る事のない「想いでの吊り橋」が赤黒く錆びて風に吹かれ大きな音を出して揺れています、今にも彼女が橋の向こうからセーラー服で笑いながら駆けてきそうな気がする懐かしくほろ苦
想い出を書いてみました。

 

 

 
 

 

  1,  セーラー服の君を待ち

     何時も一緒に通う道

     肩を並べて語ったね

     カタコトカタコト君が来る

     吊り橋揺らして駆けてくる

 

 

  2,  髪をなびかせ手を振った

     君と別れて独りぽち

     何時も寂しく帰ってた

     カタコトカタコト君は行く

     吊り橋揺らして帰ってく

 

 

  3,  同じ高校に合格し

     君の父さん喜んで

     二人のお祝いしてくれた

     カタコトカタコト手を繋ぎ

     吊り橋揺らして君の家

 

 

  4,  二人で肩組歩いたネ

     木陰で抱き合いチュウをした

     僕のハートは爆発だ

     カタコトカタコト君と行く

     吊り橋揺らして初デイト

 

 

  5,  初めて僕の家へ来た

     胸にもたれた君の頬

     指でポツンと突いてみた

        カタコトカタコト君が来た

     吊り橋揺らして浴衣着て

 

 

  6,  事故で君が逝ったとは

     母さん知らせにやって来た

     瞼はらして泣いていた

     カタコトカタコト泣いている

     吊り橋風で揺れている

 

 

  7,  線香の揺らぐその向こう

     写真の君は笑ってる

     僕のハートは壊れてた

     カタコトカタコト人が行く

     吊り橋揺らして弔いに

 

 

  8,  解って居ながら待ってみた

     涙で景色もかすんでる

     風が唸って泣いている

     カタコトカタコト君を待つ

     吊り橋揺らして来るかなと

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

011

 

   あんた                  作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 
 

 

 

 
 

 

 農家に生まれ育った私も年頃になり、徳島の町人の女性が好きになり結婚したいと両親に二人で挨拶をしましたが、お前の嫁は農家からでないとダメだと反対され、二人はお互いの家を捨てて両家の家族に隠れて徳島の裏街で生活を始めました、貧乏な生活で知り合いの喫茶店からパンの耳を貰って一食に当てた事もありました。
 そんな生活でも彼女が優しく私を呼ぶ「あんたー」と言う頼り切った言葉と根っからの明るさに助けられ力づけられてその日その日を暮らして来ました、どうにか人並みの生活が出来るように成ってきた現在、極貧の生活でありながらお互いが肩を寄せ合って生きた昔を彼女の気持ちに成って詩を書きました。

 

 
 

 

  

  1,  六畳一間でひっそりと

     二人で隠れて暮らしたネ

     明日も解らぬ貧しさも

     あんたの優しい労りを

     心の支えに生きてきた

 

 

  2,  明日の稼ぎと紅をさす

     ネオン揺らめく秋田町

     路地を入ったスナックで

     顔で笑って心で泣いた

     幸せあまりに遠すぎた

 

 

  3,  苦労の末に報われた

     二人で掴んだ幸せが

     寒い夜風に散らぬなら

     他には何も欲しくない

     アンタが居れば生きられる

 

 

 

 

 

 

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

012

 

   息子よ                  作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 
 

 

 

 
 

 

 建設現場の事務所に居た私の所へ地元の総合病院から電話が掛かってきた、妻が早産の恐れで緊急入院したとの事である、現場から急ぎ駆けつけた時には既に未熟児として息子は生まれていました、シワだらけの小さい体を硝子の箱の中で動かし続けていました、担当医からは希望は持てません、ここ数日が山ですと言い聞かされた、私は数日経って妻と一緒に硝子越に息子を眺めていた時、妻が突然に大きな声で「どうせ助からないのであれば、今硝子の箱から出して一度この腕にしっかりと抱いてやりたい、そうでないと母親に一度も抱かれる事無く死んでいくこの子が余りにも可哀想過ぎる」と泣き崩れた、それから一ケ月経ち奇跡的に硝子の箱から息子は元気に出る事が出来ました、それからは小さい体ながら息子は元気にすくすくと育ち、現在は私と息子の二人で小さい会社を経営しながら幸せに生活しています。 

 

 

 
 

 

 

  1,  生まれて来たなおめでとう

     硝子の箱で跳ねている

     シワにまみれた小さな子

     せめて一度はこの胸に

     抱いてやりたいこの命 

 

 

  2,  硝子の箱は出たけれど

     小さな小さな男の子

     妻に良く似た色白の

     俺にも似てると覗き込む

     お前を抱いて子守歌

 

 

  3,  土にまみれて野を駆ける

     病に負けぬ元気な子

     男前では無くっても

     少し頭が悪かろと

     他人に優しい人となれ

 

 

  4,  お前の優しい気遣いに

     頑固な爺の目に涙

     家族で働く幸せに

     俺の全てを伝えたい

     お前は俺の宝物

 

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

013

 

   見返り峠                 作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世

 

 
 
 
 

 

  祖谷地方へ橋梁の点検作業に行き、80歳近いお婆さんと友達に成った、色々と話す内にお婆さんは自分の若い頃の話をし始めました、昔は道が狭くて坂も急で、村外へお嫁に出て行く時、馬の背に揺られて九十九折りの坂を越えて行ったそうです、道を曲がる度に自分が育った茅葺き屋根の我が家が見えて涙したと、遠くに目をやりながら語ってくれました、人はこの坂を「見返り峠」と呼んだそうです、三年程は幸せな結婚生活を送っていたのですが、夫が事故で亡くなり姑に「未だ若いのだから里に帰れ」と言われ、三歳にも満たない娘を連れて見返り峠を越えて祖谷に帰ってきたとの話を涙しながら語ってくれました、その話に感銘を受けて詩を書き、川田さんに作曲して貰い、CDに録音して、翌年お婆さんを祖谷に訪ねましたが、既にお婆さんは亡くなっていて、ついに私の詩は聴いて貰えませんでした、人の命のはかなさを想い知り悔いが深く残った詩であります。

 

 

 
 

 

  1,  里に帰れと家追われ

     母に連れられ峠を越える

     母娘で仲良く暮らそうと

     二人で手を取り泣いていた

     此処は奥祖谷見返り峠

 

 

  2,  父さんが逢いに来ないと

     だだ捏ねる私を背負い

     夕暮れの山道登り

     南の空の父さん星を

     母と眺めた見返り峠

 

 

  3,  父のない子の見る夢は

     運動会で手を引かれ

     父と仲良く走る夢

     微笑む姿の父さんに

     逢いに行きたい見返り峠

 

 

  4,  母さんお世話に成りました

     明日は目出度い門出の日

     白無垢姿を見せたいと

     父さん星が輝く頃に

     母娘で登った見返り峠

 

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

014

 

   阿波踊りの夜               作詞 日下 晴久     作曲 内田 明子

 

 
 
 
 

 

 会社勤めに疲れ果てて休暇を取り旅に出ました、淡路経由で徳島へ入った時が丁度阿波踊りの最盛日でした、桟敷の入場券は手に入れたものの、桟敷の場所が初めての事で解りませんでした、新町橋の袂で踊り衣装の若い女の人に声を掛けて聴くと、「今からその桟敷へ躍り込むので案内します」と手を握り人混みを掻き分けながら誘導してくれました、何の飾りもしていない細くて綺麗な彼女の指が汗ばんでいるのがすごく艶めかしく、ドキドキしながら跡に付いて人混みを掻き分けて桟敷に着きました。
 やがて桟敷から眺めていた私の前に彼女の所属する連が踊り込んで来ました、偶然にも彼女は私の座っている桟敷に一番近い所を踊っていました、細い指を綺麗に反らして艶をなし笑いながら踊っています、私は大きな声で「有り難う」と叫びました、彼女は振り向いてニッコリと笑い頷き会いました、その夜は彼女が踊る桟敷を追いながら、待ち時間に彼女と楽しく語り合う事が出来ました、今は私の女房に成っている彼女との出合いを思い出しながら書きました。

 

   

 
 

 

 

  1,  君と初めて逢ったのは

     今から丁度2年前

     会社勤めに疲れ果て

     心癒しに徳島へ

     旅した夏の頃だった

 

 

  2,  よしこのざわめく橋の上

     桟敷を尋ねる僕の手を

     握って人混み掻き分けた

     踊り衣装の君の顔

     汗が光って笑ってた

 

 

  3,  桟敷で眺める阿波踊り

     笠で隠れた君の目が

     私に気が付き頷いた

     赤い蹴出しが揺れている

     心ときめく夏の夜

 

 

  4,  今では愛しい僕の妻

     二人で眺める阿波踊り

     近頃お腹も目立つてる

     生まれるこの子が女なら

     踊り上手に育てたい

       

     

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

015

 

  お出でよ徳島              作詞 日下 晴久     作曲 川田彩知世  
 

 2010年だったでしょうか、徳島青年会議所が徳島を宣伝するような曲を募集していました、初めて詩を書き応募しましたが見事に落選しました、最初から選に入るとは思っていませんでしたので、そのまま忘れて作詞したノートに挟んでいたのですが、それを川田さんが目に留めて曲を作らせてと作曲してくれました、徳島の四季の観光と生活を書いたつもりでしたが、どうでしょうか。

 

 
 
            
 
 

 

  1,  阿波の徳島知ってるかい

     春の大潮鳴門に来れば

     世界一だよ鳴門の渦は

     激流育ちの鳴門の鯛を

     食べて行かんせ魚の料理

 

 

  2,  阿波の8月踊りの季節

     街がざわめくよしこのリズム

     踊り期間の四日に掛けて

     老いも若きも踊って果てる

     嫁に取るなら踊り子美人

 

 

  3,  阿波の紅葉を見に来ておくれ

     祖谷の秘境のカズラ橋

     清き水面に紅葉が映える

     露天の風呂に浸かって聴くは

     誰が歌うか粉挽き唄

   

 

  4,  四国遍路の一番寺は

     阿波の大麻霊仙寺

     冬の阿波路に同行二人

     きつい山坂我慢の歩み

     情けが身にしむお接待 

   

 

 
     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

016

 

  お前さがして             作詞 日下 晴久  
 

 

 

 

 

 

 
 

 

 

  1,  お前と別れて恋もした

     虚ろな心は満たされず

     今も心に残るのは

     駅で別れて手を振るお前

     未練男と笑えば笑え

     お前を捜して旅に出た

     木の葉舞い散る北の街

     茜の空に日が落ちる

     逢いたいなぁ恋しいなぁ

     今日もさすらう旅の空

   

 

 

  2,  南の街の祭りの夜店

     お前に良く似た後ろ影

     胸は高鳴り心は躍る

     前に回れば似た他人

     体の弱いお前の事が

     元気で居るのか気に掛かる

     何処でどうして居るのやら

     心安らぐ時もない

     逢いたいなぁ恋しいなぁ

     今日もさすらう西東

 

 

  3,  お前の面影心に抱いて

     旅の寝床は星の宿

     体凍てつく心が寒い

     今宵の夢に何を見る

     探しあぐねて今年も越えた

     生きて再び逢えぬのか

     田舎の道の道祖神

     両手合わせて心で祈る

     山の彼方に日が沈む

     明日は故郷に帰ろうか